けれどまたもや頭に浮かぶのは湊のことだった。

湊のあの美味しいスイーツは、これからは私ではなく堀内さんの為に作られるのね。

湊と堀内さんはもう初デートを終えて、無事交際を始めたんだろうな。

「渚先輩、なに考えてるんですか?」

和樹に声を掛けられ、渚はハッと意識を現実に戻した。

「ごめんごめん。なんか長閑(のどか)すぎて、ぼーっとしちゃった。」

「そうですか。今日はのんびりしてください。」

「でも、宗像君、本当に料理上手ね。気も利くし、いい夫、いいパパになりそう。」

「そのことですけど・・・。」

和樹は真面目な顔で渚の方に身体を向けた。

「・・・・・・?」

「前にも言いましたけど、俺本気です。俺を渚先輩の夫候補として考えてくれませんか?」

「えっと・・・」

「お願いします!」

「・・・・・・。」

そう。宗像君みたいな男性と結婚するのが幸せなんだって頭ではわかってる。

きっと家事は積極的に担ってくれるだろうし、子育てだって積極的に関わってくれる。

保育園のお迎えだって行ってくれるだろうし、遠足のお弁当だって作ってくれるだろうし、家族サービスだってバッチリで・・・。

宗像君は、もう二度と現れない優良物件かもしれないのに・・・。

なのにどうしてこんなにも心が動かないの?

私は馬鹿だ。大馬鹿だ。

きっとまた華や美々に叱られる。

でも・・・・・・