「渚先輩、そろそろお腹空きません?俺、弁当作ってきたんです。」

「ええ?ほんと?!」

「はい!一緒に食べましょう。」

「うん。」

遊園地内のフードコートのテーブル席に付くと、和樹はベージュのリュックサックの中から、弁当箱とアルミホイルで包んだおにぎりをふたつ取りだした。

「梅とおかかのおにぎり、どっちがいいですか?」

「んーそれじゃ、梅で!」

「じゃあ、はい。」

和樹は片方のおにぎりの包みを渚に手渡した。

弁当箱の中身も豪華だった。

だし巻き卵にピーマンの肉詰め、きんぴらごぼうにポテトサラダ。

小さなタッパーにはうさぎの形をしたリンゴのデザートまであった。

「私もなにか持って来れば良かった。女子力足りないね。ごめん。」

渚が申し訳なさそうな顔をすると、和樹がたしなめるように言った。

「男とか女とか、今の時代そんなこと言うのはナンセンスですよ。料理の得意な方が作ればいいんです。」

「・・・そっか。」

「そうです。では食べましょう。」

「うん。じゃ、遠慮なく・・・いただきます。」

「いただきます。」

だし巻き卵を箸で口に運んだ渚は、その美味しさに声を上げた。

「ん!おいしー!」

「そうですか。良かったです。」

和樹のあどけない笑顔に、渚の心も和んだ。