「あ、ありがとう。」

「どういたしまして。」

優しげな目で、そうにっこりと微笑む和樹の笑顔がまぶしい。

会社が定休日の午後、渚と和樹は都内にある遊園地へ遊びに来ていた。

「宗像君の私服って新鮮。会社ではスーツ姿しか見ないし。」

今日の和樹はTシャツにGパンというラフな格好で、その童顔も相まって学生といってもおかしくない風貌だ。

「それを言うなら渚先輩だって。」

渚も今日はデニムのワンピースに黒いレギンスを履いて、カジュアルな服装だ。

「お洒落な渚先輩も素敵ですけど、今日みたいな軽装もいいです。もっというならすっぴんの先輩も見てみたいです。」

「なにそれ。褒めすぎ。」

和樹の言葉はどれも渚に対する賛辞ばかりで、耳に心地よく響く。

女としての自尊心を満たしてくれる。

それに比べて湊は・・・・・・。

渚は湊の憎まれ口を思い出していた。

お前呼ばわりだし、口は悪いし、不機嫌になると私を置いて行っちゃうし。

けれど、渚がなんの気も遣わず飾らず対等に話ができる男性は、湊が初めてだった。

いけない、いけない。

渚は湊の残像を吹っ切るように、ふるふると首を横に振った。

今日は宗像君とのデートなんだから、湊のことなんか忘れて楽しまなきゃ。