どんなに辛いことがあっても、夜眠れなくても、容赦なく朝日は昇り、出社時間が訪れる。

居酒屋「はな」で散々泣いた渚は、今まで以上に仕事に励もうと決意した。

もう私に誇れるものは仕事しかない。

仕事で人の役に立って、仕事で結果を出して、仕事で自分を幸せにするの。

私にはそんな生き方しか出来ない。

そんな悲壮感を漂わせ、がむしゃらに働く渚の姿を、宗像和樹は心配そうにみつめていた。

和樹はひそかに想いを寄せる渚が、誰よりも早く出社し、誰よりも物件に足を運び、誰よりも長く残業をしているのを痛ましく思っていた。

そんなとき和樹は同期の小山内美々に耳打ちされた。

「渚先輩ね・・・つい最近失恋したの。その日は泣いて大変だったんだから。強がっていても渚先輩はか弱い乙女。そんな渚先輩を励ませるのは宗像、あんただけよ!」

美々の言葉に和樹は心を決めた。