「で?その彼氏とはどこで知り合ったわけ?」

切り子細工の模様が美しい青いグラスをまじまじと眺めたあと、その中身である芋焼酎霧島を一気飲みした渚は、酔いでとろんとした目をカウンター席の隣に座る美々に向けた。

ここは渚が週に一度は通う和風居酒屋「はな」

カウンターと座敷の席が4つというこぢんまりとした店内だが、焼き鳥とおでんが絶品だという熱烈な常連が少なからず存在し、店はいつも満席状態だ。

渚はその常連の中でもかなりの古株に入る。

なにせ店主の大谷華(おおたにはな)とは高校時代からの友人で、店の開店準備も手伝った仲だ。

開店当初はこの店にせっせと知り合いを連れて行ったものだけれど、今はもうそんなことをしなくても十分賑わっていて、渚はそのことに喜びを感じていた。

「えー?それ聞いちゃいます?」

そうもったいつけながら身体をくねらす美々の耳たぶを、渚は思い切り引っ張った。

「いだだだだだ!」

そう叫ぶ美々の肩にぐいっと腕をまわし、容疑者に自供を促す鬼刑事の如く、渚は低音ボイスで囁いた。

「ほら、吐け。全部吐いて楽になりな。」

「近い近い!わかりましたってば!」