その後、美和子と何を話したのかまったく憶えていない。

ただ頭が真っ白になり、大きな喪失感と敗北感に打ちのめされた。

その事実は、渚の心の奥底にあった湊への熱い想いを否応なしに引き出し、そしてノックアウトした。

完全一発KO負け・・・今更自分の気持ちに気づいても、もう遅い。

「なによ・・・優しくって気遣いが出来てって誰のことよ。私には悪態ばかりついてたくせに・・・。」

そんなことを口にしても思い出すのは、湊のさりげない優しさ、ふいに見せる照れた笑顔だった。

自分のなにが悪いのか、自分でも良くわかってる。

ここ一番というところで素直になれない自分。

人からの頼みを断れないええかっこしいの自分。

何が欲しくて何を手放したらいいのかを判断できない自分・・・

「でもさ・・・そこが渚の良いところでもあるんだよね。だからさ・・・元気出せ。」

華が渚の身体をひしっと抱きしめた。

「先輩・・・失恋の痛みは新しい恋で癒やすのが一番です。もう恋なんてしないなんて、絶対に言わないよ・・・とマッキーも言ってますしね。」

「もう無理・・・この先こんなに好きになれる人と出会える気がしないもん・・・」

「よし!今日は飲もう!とことん飲んで、コロッと次の女に乗り換えるような軽い男なんて忘れちゃいなさい!」

華は渚のグラスに日本酒「久保田」をなみなみに注いだ。