湊はしばし顔を強ばらせ、やがて無表情になり大きくため息をついた。

「渚は俺と同じ気持ちなのかと思っていたけど、どうやら俺の自惚れが過ぎていたようだな。」

「・・・え?」

「わかった。会うよ。その女と。渚おすすめの優良物件なんだろ?」

「・・・うん。」

「たしかに俺が望む条件とぴったりだしな。誰かさんと違って。」

「・・・・・・。」

「その堀内さんとやらの電話番号を教えろ。俺が話つけるから。」

「・・・わかった。」

渚はカバンからメモ用紙を取り出すと、そこに美和子の携帯番号を書いて湊に手渡した。

湊はそれをひったくるように掴み取ると、財布から万札を一枚テーブルに置き、ジャケットを羽織り立ち上がった。

「帰る。」

それだけ言い残し、湊は足早に店を出て行き、渚はその後ろ姿をただ悄然と見送った。