「実は、湊に紹介したい女性がいるの。」

「は?」

湊は眉間にしわを寄せた。

「仕事で担当したお客さんなんだけど・・・堀内美和子さん。27歳。受付嬢。顔は可愛いしスタイル抜群、そして性格も明るくて素直で良い子なの。・・・結婚したら仕事を辞めて家庭を守るために専業主婦になりたいんだって。」

「・・・・・・。」

「湊も一回すれ違ったことあるでしょ?ほらあのM丘駅の改札口で。憶えてない?湊が言ったのよ?『いい女だな』『紹介しろよ』って・・・」

「・・・冗談だと言ったはずだ。」

「でも好みのタイプってことには違いないでしょ?どう?会ってみない?彼女、湊にとって超優良物件だと思う。」

「大事な話ってこのことか?」

「・・・・・・。」

「それがお前の本当の気持ちなのか?」

湊は渚の瞳の奥を覗き込んだ。

その強いまなざしに全てを見透かされそうで、渚は思わず目をそらした。

「大切な客の頼みだから、仕方なく引き受けたんだろ?」

「・・・・・・。」

「そうだって言えよ。」

「・・・違う。湊に幸せになって欲しい・・・心からそう思ったの。」

「俺の幸せを勝手に決めるな。」

「だって湊はお母さんが仕事に没頭していたから淋しい想いをしたんでしょ?だから・・・」

「あんな女と自分を一緒にするな。俺は渚が」

「どうしてそう言い切れるの?!私だってもしかしたらそうなってしまうかも・・・」

「渚は絶対にそうはならない。お前の優しさ、温かさは俺が一番良く知っている!」

「・・・・・・。」