そう手を合わせて頼み込む美和子に、渚の心は乱れた。

たしかに美和子は、湊の望む交際相手としてこれ以上なくふさわしいと思える。

結婚したら迷わず仕事を辞め、家庭を守るために専業主婦になりたいと決めているし、素直で明るくて気遣いも出来る朗らかな性格だ。

加えてルックスだって、グラビアアイドルみたいにメリハリのあるスタイルで、顔の造形も愛らしい。

何より湊自身も一瞬見ただけの美和子を「いい女だな」とつぶやき、「紹介しろ」とまで言っていた。

あのときはなんの冗談かと思っていたけれど、案外この組み合わせは上手くいくかもしれない。

いや、上手くいく予感しかしない。

美里が自分を取り戻し、湊の心の重圧が消え去ったいま、今度は湊が幸せになる番なのではないだろうか?

私がその手助けをしてあげられないだろうか?

でも、と渚は自分に問いかけた。

本当にそれでいいの?

私の湊への気持ちは・・・?

ううん。

やっぱり私は仕事を辞められない。

仮に自分を曲げて湊と結ばれたとしても、きっと後悔するだろう。

湊を幸せに出来るのは堀内さんだ。

堀内さんなら湊を全力で支えてくれるはずだ。

湊が幸せになれば、私はそれでいい・・・。

そんな揺れる思いを心の奥底へ押し込み、渚は美和子ににっこりと微笑んだ。

「わかりました。その知りあいに連絡してみますね。きっと彼も堀内さんのことを絶対気に入ると思います・・・」