「宇佐美くん、どうしたの? 皆行っちゃうけど……」

「……あれ」


宇佐美くんが指をさす先には、私が好きなキャラクターのクレーンゲームがあった。


「あ、にゃー助くんだ」

「夏目さん、あれが好きなんでしょ?」

「うん、好きだけど……よく知ってたね」

「カバンにストラップがついてたし、昨年も、あの猫がついたタオルとか使ってるの……見てたから」


昨年は視界に入らないように気をつけていたつもりだったけど、宇佐美くんには使っていたタオルまでばっちり見えていたらしい。


「そ、そっか」

「……行こ」


宇佐美くんは私の掴んだ手を離さないまま、にゃー助くんのクレーンゲームがある方に向かって歩き始める。


「これ、やるね」


宇佐美くんは財布を取り出して百円玉を投入すると、ガラス越しに見えるにゃー助くんのぬいぐるみマスコットを真剣な表情で見つめる。