「んじゃ、早速行きますか」

「あ、待って。よければこのみかん、ここで食べていかない? これを持ったまま店にいくのもどうかなと思って」


蓮見くんが手元にぶら下がったままのビニール袋を掲げて言う。


「それもそうだよね。それじゃあ、この上のベンチで食べてから行く?」


夏美ちゃんの提案に頷いた私たちは、皆で三十段はありそうな石段を上って、神社の境内を目指す。

境内に参拝客の姿は見られなかったので、私たちは空いているベンチに座って、大きなみかんを一つずつ食べた。皮が厚くて少し剥きづらかったけど、家で食べるものよりもずっと甘く感じる、美味しいみかんだった。


「夏目さん」


みかんを頬張っていれば、左隣に座っている宇佐美くんに話しかけられる。


「さっき猫宮さんも言ってたけど……俺も、夏目さんはもっと自信を持っていいと思う」

「え? っと……うん、頑張るね?」

「……さっき聞こえなかったと思うからもう一回言うけど、そのワンピース、すごくかわいい。夏目さんによく似合ってる」


話の脈絡なく、いきなり“かわいい”って褒められて、顔がぶわっと熱くなる。