「そうそう。俺の体調が良くないことに気づいた小夜ちゃんが、声を掛けてくれたんだよ。優しいよなぁ」

「……は? お前、何勝手に夏目さんのことを名前で呼んでるわけ?」


何故か大賀美くんの名前呼びに反応した宇佐美くんが、低い声を漏らした。

こちらから表情を見ることはできないけど、何だか、怒っているような気が……。


「えー、別にいいじゃん。あ、分かった。もしかして宇佐美んも、小夜ちゃんのこと、名前で呼びたいとか?」

「……その気色悪い呼び方、やめろって言ってるだろ」

「もしかして図星? 男の嫉妬は見苦しいぞ~。もっと素直にならなきゃ」

「……」


――どうしよう。二人が何のことを話しているのかは分からないけど、仲良くおしゃべりしているって雰囲気ではない。むしろ、どんどん雲行きがあやしくなっている気がする。


戻ってくるのが遅いことを心配したのか、アップをしていた何人かの部員たちが、何事かと体育館の出入り口から顔をのぞかせている。

だけど二人は、そんな視線を集めても尚、一切気にしていない様子で会話を続ける。