「何やってんの」


困っていれば、そこに聞きなじみのある声が響く。

その声の主が誰か分かった瞬間、私は無意識に強張らせていた肩の力をぬいていた。


「お、宇佐美じゃん。久しぶり~」

「夏目さん、大丈夫? あいつに何か変なこととか、嫌なこととかされてない?」


宇佐美くんは、私と大賀美くんの間に身体をすべりこませてきた。私をかばうように背中を向けながら、顔だけこちらに振り向いて、心配そうまなざしを向けてくる。


「ううん、私は全然大丈夫だよ! ただ、大賀美くんの具合が悪そうだったから、ここで少し休んでただけなんだ」

「大賀美が?」


宇佐美くんは(いぶか)しそうな顔をしながら、大賀美くんに目を向ける。

今まで何度か練習試合をしたと言っていたし、二人は顔見知りなのだろう。……それにしては、宇佐美くんのまとう雰囲気が、どこか重たく感じるような気もするけど。