「と、とりあえず、全員席につけよー。授業始めるからな」


生徒と同様に困惑していた担任の先生も、私と宇佐美くんが席に着いたのを確認すると、ハッと我に返った様子で声を上げた。


まだ席を移動していなかったクラスメイトは、皆ひそひそと小声で話していて、その視線は確実に私と宇佐美くんに向けられているはずなのに……宇佐美くんはそんな視線何にも気にしてないみたいで、何故か私の顔をジッと見つめてくる。


私は俯き気味に前を向いて、宇佐美くんと視線が合わないようにしながら、膝の上で祈るように両手を握りしめていた。



――はじまりの春。新しいクラスに、新しい友達に、ドキドキの席替え。

ワクワクでいっぱいだった心の中が、今では不安で塗りつぶされている。


宇佐美くん、どういうつもりで私を隣の席に指名したんだろう。だって宇佐美くんは、私を嫌っているはずだし。……もしかしてこれ、嫌がらせだったりするのかな? ということは、これから毎日キツイ言葉を投げかけられたり、無視されたりするんだろうか。


私はこれからの学校生活を想像して、胃がキリキリと痛むのを感じていた。