「そのタオル、今、俺に渡してくれようとしてたよね?」

「え、っと、うん」

「もらってもいい?」


引っ込めた私の手に気づいたらしい宇佐美くんは、自ら手を出して、タオルを受け取ってくれた。額の汗をぬぐう姿を見つめながら、やっぱり最近の宇佐美くんは変だよなぁって、胸がソワソワしてしまう。


――普通に接することができて嬉しいような、でもその変化がちょっぴり怖いような……複雑な気持ち。


何だか気まずくて彷徨(さまよ)わせていた視線を、そーっと持ち上げてみれば、切れ長のダークブラウンの瞳とばっちり目が合ってしまった。


「夏目さん。俺、今日の試合がんばるから。……俺のこと、ちゃんと見ててね」


宇佐美くんは真面目な顔をしてそう言ったかと思えば、チョコレートみたいに甘い笑みを広げて、私の頭をぽんと軽く撫でる。そしてまた、シュート練習に戻っていった。

遠ざかって行く後ろ姿を、私はポカンと呆けた顔で見送る。