「夏目さん」


聞こえた声に足を止めて振り返れば、数メートルはなれた所に、宇佐美くんが立っている。


白い半袖に学校指定の黒いハーフパンツを着用している宇佐美くんの額には、よく見れば汗がにじんでいる。だけどクールな顔立ちも相まって、その雰囲気は爽やかだ。


体育会系特有の、いい意味での暑苦しさみたいなものを、宇佐美くんからは全然感じない。


「宇佐美くん、どうかした?」


黙ったままの宇佐美くんに、私の方から用件を聞いてみた。

そのついでにと、そばにあった洗い立てのタオルを手にして宇佐美くんに渡そうと思ったけど……突き返されたら悲しいから、やっぱり止めることにした。