「う、うう宇佐美くん!? あのっ、はなして…「というかさ、さっき凪沙のこと、名前で呼んでたよね? 何で?」

「うぇっ!? な、何でって……」

「凪沙ばっかりずるい」


全然意識してなかったけど、さっきのこともあって、咄嗟に下の名前で呼んじゃってたんだろうな。

でも、どうして私が蓮見くんを名前で呼んだことが、宇佐美くんにとって“ずるい”になるんだろう。


宇佐美くんは、拗ねたような顔をして、ぷくっと頬をふくらませている。

いつもクールで涼しげな表情をしていることの多い宇佐美くんのこんな顔、はじめて見る。正直、すごくかわいく見え……じゃなくて!


「あ、あのっ、とりあえず、離してもらってもいいかな!?」


――私の心臓が、もう限界なので!


ものすごい速さで鼓動を打っているし、宇佐美くんにも聞こえてるんじゃないかなって思う。

熱くなった顔を隠すようにうつむきながら、必死の思いでお願いすれば、宇佐美くんは渋々ながら私を解放してくれた。