「でも、夏目さんにけががなくてよかったよ。……守るって言ったのに、間に合わなくてごめんね」


蓮見くんが眉を下げて謝ってくれるけど、そもそもドジをして階段を踏み外した私が悪いだけで、蓮見くんには何の非もない。


「ううん、私がドジしちゃっただけで、凪沙くんは何にも悪くないから……!」

「ねぇ、守るって何?」


蓮見くんと話していれば、宇佐美くんが話に割り込んでくる。

その顔を見れば、眉間にしわが寄っていて、何だか不機嫌そうだ。


――あれ。宇佐美くん、何だか怒ってる……?


宇佐美くんの顔を見上げたまま、何て返すのが正解なのかと困っていれば、宇佐美くんのひんやりした手が、私の頬にそっと触れた。


「夏目さんは俺が守るから、大丈夫」


真剣な顔をして蓮見くんに言い放った宇佐美くんが、今度は私の顔を、至近距離で覗き込んでくる。

そこでようやく、私はいまだに宇佐美くんに腰を支えらたままの状態だったということに気づいた。