重たい足を動かして、戦地に赴くような気持ちで一番後ろの席に向かう。


そこで声を掛けてきたのは、クラスでも明るいグループに所属している川中さんだった。

昨年はクラスが別でまだ挨拶程度でしか話したことはないけれど、誰とでもすぐに打ち解けられそうな雰囲気を持っている、気さくそうな女の子だ。


「ねぇ、もしかして夏目さんって一番後ろ? しかも隣、宇佐美くんじゃん! いいなぁ」

「……あの、よかったらこのくじ、交換する?」

「えっ……いいの!?」


小声で提案すれば、川中さんは驚きながらも嬉しそうに声を弾ませている。


宇佐美くんの隣の席だなんて、これから毎日意地悪なことを言われて、その度に傷ついて――虐げられる毎日を送ることになるに決まってるんだから。

むしろ喜んで交換するよ。


川中さんとこっそりくじを交換しようとすれば、そこに現れたのは、ついさっきまで席についていたはずの宇佐美くんだった。


何故か私は、くじを持っている腕を宇佐美くんに掴まれてしまい――そして話は、冒頭に戻ることになる。