「それじゃあ、何で避けてたの?」

「そ、それは……」


今度は私が言いよどむ番だった。

だけど宇佐美くんは逃がさないと言わんばかりに真っ直ぐなまなざしを向けてきて、握る手にも僅かに力をこめられる。触れた部分から、宇佐美くんの熱がじんわり伝わってきた。


「その……宇佐美くんと夏美ちゃんが付き合ってると思ってて、だから、私が宇佐美くんと話してるのを見て、夏美ちゃんが嫌な思いしてたら嫌だなって思ったから……」


たどたどしくも昨日避け続けていた理由を伝えれば、宇佐美くんはグッと下唇を噛みしめて、何故だか悲しそうな顔をする。


「……付き合ってないよ。夏美はただの幼馴染で、それ以上でもそれ以下でもないから」


宇佐美くんは私から視線を逸らすことなく、昨夜夏美ちゃんからも聞いた話と遜色ない、幼馴染だという事実を教えてくれた。


「それじゃあ、前に宇佐美くんが言ってた好きな子は、別にいるってこと?」


この際にと気になっていたことを直接聞いてみれば、宇佐美くんは僅かにたじろぎながらも、薄っすら顔を赤くして頷いた。


「……うん、そうだよ。俺が好きな子は……」


真っ直ぐに見つめ合っていた宇佐美くんの顔が、少しずつ近づいてくる。

スローモーションにも思えたその瞬間は――保健室の扉が勢いよく開かれたことで、終わりを告げた。