「ごめん、宇佐美くん。あの、これからはより一層、宇佐美くんの視界に入らないように気をつけ…「っ、違う!」


勢いよく顔を上げた宇佐美くんが、声を荒げた。

いつも物静かな宇佐美くんの大声に驚いて固まっていれば、宇佐美くんもハッとした表情で気まずそうに目線を逸らす。


「違う、そうじゃなくて……」


俯いた宇佐美くんは、口をもごつかせている。

けれど逸らしていた視線を真っ直ぐに私に向けたかと思えば、静かな声音で話し出した。


「俺にやなとこがあるなら、教えてほしい。夏目さんに嫌われたくないんだ。避けられんの、辛い……」


今にも泣き出しそうな顔をしている宇佐美くんに、弱々しく手を握られた。

私は何て言葉を返したらいいのかも分からないまま――というか、今宇佐美くんに何を言われたのかもいまいち理解ができなくて、ポカンと呆けた顔をしていると思う。


「えっと、あの……別に宇佐美くんに嫌な所があるから避けてたとか、そういうわけではなくてね……」


――むしろ私を嫌っているのは、宇佐美くんの方なんじゃないの?


その続きは口には出せなくて……だって、真正面から「嫌い」って言われたら、立ち直れなくなりそうだから。