「……先生、いないみたいだね」


今はGW中だし、先生もお休みなのかもしれない。

そう考えれば、付いてきてよかったかもしれないな。一人でテーピングを巻くのって難しいのかもしれないし。


黙ったままの宇佐美くんをキャスター付きの丸椅子に座らせた私は、入室名簿に名前を書いてから、医薬箱からテーピングを探して、患部を冷やすための氷嚢を用意する。


――というか私、テーピングなんてしたことないんだけど……宇佐美くん、一人でするのはやっぱり難しいよね。教えてもらえば、私でもできるかな?


見つけたテーピングを手にして戻り、宇佐美くんの前に置いた丸椅子に腰を下ろす。


「あの、私テーピングってしたことなくて……これを巻けばいいんだよね?」

「……うん」


静かに頷いた宇佐美くんは、何だか……元気がないように見える。

表情はいつもと変わらないんだけど、何ていうか、雰囲気に覇気がないような感じがする。


宇佐美くんがそれ以上言葉を発する様子がないため、私は「触るね」って声を掛けてから、まずは用意した氷嚢を患部にそっと押し当てた。

数分してから、慣れない手つきで宇佐美くんの人差し指にテーピングを巻き付けていく。