「遥翔は本気でムカつくけど、そのおかげで小夜ちゃんと仲良くなれたから、そこだけは感謝してもいいかな」

「あはは……あの、でも宇佐美くんは本当に悪くないから、本人には何も言わないでもらえたら嬉しいな」

「んー……小夜ちゃんがそう言うなら、分かった。私からは何も言わない。でも、もしまた遥翔に何かされたら、絶対に私に言ってね。私が倍返しにしてやるから」


ニッコリと笑って頼もしい一言をくれた夏美ちゃんと一緒に、寝泊まりすることになる女子部屋に戻れば、お風呂に入る準備を終わらせたつっこちゃんが待っていてくれた。


つっこちゃんにも夏美ちゃんのことを紹介して、三人で連絡先を交換した。

新たに一人分増えたアドレス帳に嬉しくなって一人でにやけていれば、それを見たつっこちゃんと夏美ちゃんには散々揶揄われることになった。


――あれ、でもそういえば……宇佐美くん、この前好きな子がいるって言ってたけど、あれって夏美ちゃんのことじゃなかったのかな? それとも、宇佐美くんの片思いって可能性もあるのかな。

幼馴染に恋するって展開は、少女漫画で何度も読んだことがある。もしそうなら、応援してあげたいな。……まぁ、嫌いな私に応援されるなんて、むしろ嫌な気持ちにさせてしまうかもしれないけど。


一人で完結して苦い笑みを浮かべていれば、「ほら小夜、早くお風呂行くよ!」とつっこちゃんに呼ばれる。

慌てて詰め込んだ入浴グッズを手にした私は、出入り口で待ってくれているつっこちゃんと夏美ちゃんのもとに向かったのだった。