昨年のクラスは違えど、バスケ部である宇佐美くんと、部活動の一環で週に何度かバスケ部に差し入れをすることになっている料理部所属の私は、顔を合わせる機会も少しはあったのだ。

けれど宇佐美くんは、私が差し入れとして手渡した飲み物はいつだって受け取ってくれないし、廊下ですれ違った時に睨まれたこともあった。


「そこ、邪魔なんだけど」

「……小さすぎて、見えなかった」

「何で一人でやってるの? 誰かに声掛ければいいだろ。……周りに迷惑かけることになるとか、考えないわけ?」


エトセトラ、etc.……。


初めはそんな冷たい言葉にも笑顔で対応していたけれど、それも次第にしんどくなってきてしまって……私は宇佐美くんを避けるようになった。


宇佐美くんは人気者だから、いつだって誰かしらに囲まれている。

それに、その身体から漂うイケメンオーラや、周りの男の子たちよりも頭一つ分高い身長もあって、遠目からでもその存在に気付くことは容易かった。


だから私は、その姿を見つければ、徹底的に避けて避けて……部活以外ではなるべく顔を合わせることのないように、細心の注意を払った。

そうやってこれまでやり過ごしてきた。――自分の心を守るために。


だけど二年生になって、宇佐美くんとまさかの同じクラスになってしまった。


それだけでも憂鬱だったのに、初めての席替えで窓際一番後ろの席を引き当てて喜んでいたのも束の間――まさかの隣の席に宇佐美くんが座っていたのだ。私の心は晴れ模様から一変、どんよりとした曇り空に変わってしまった。