「小夜ちゃんと、月子ちゃんだよね?」


ポニーテールを揺らした藤崎さんが、ニコリと綺麗な笑みを浮かべて調理室の出入り口に立っていた。


「今日はバスケ部の手伝いにきてくれてありがとう。改めてお礼を言わせてもらうね」


藤崎さんは夕食の後も練習をする部員たちに付き合っていたのか、その手には使用済みのタオルを数枚持っている。


「ううん、参加を決めたのは私だし……そんなに畏まってお礼してもらわなくても大丈夫だよ」

「ってか、昨年は参加しなかったから知らなかったけど、バスケ部の練習って思ってたよりハードなんだね」

「ありがとう。うん、昨年までは三年の先輩が二人いたんだけど、今年は卒業しちゃっていないからね。だから手伝いにきてもらえて本当に助かってるんだ」


藤崎さんは私たちの手元に数枚ほど残っている食器に視線を移して、「明日は手伝うね」と眉を下げて言う。

藤崎さんだって、今まで練習に付き合っていて疲れているはずなのに、こうして私たちのことを気遣ってくれている。噂通り、すごく優しい子なんだろうな。