「でもさ、どうしてあんなに避けてたの? まぁ宇佐美のクソヤローは小夜に酷い態度ばっかりとるし、私も前々から気に食わないとは思ってたから、別にいいんだけどさ。……最近は席も隣になって、時々話したりしてたじゃん?」

「……つっこちゃん、くそとか、お口が悪いよ」

「あら、失敬失敬」


カラリと笑ったつっこちゃんは、「で?」と私に返答を求めてくる。

――これは答えるまで、逃がしてくれないかもしれないな。


周りに誰もいないことを一応確認してから、マネージャーの藤崎さんが宇佐美くんをジッと見つめていたことや、二人が付き合っているんじゃないかと思っているっていう憶測を伝えようと、口を動かす。


「あの、ちょっといいかな?」


だけど、二人しかいないはずの調理室に、鈴を鳴らしたようなかわいらしい声が響いたから、私は開きかけた口をそっと閉じた。