キョロキョロと辺りを見渡してみれば――あっ、藤崎さんだ。


バスケ部マネージャーである藤崎さんが、宇佐美くんをジッと見つめている。

私は目が合ってしまう前にと、サッと視線を逸らした。


――もしかして、さっき部員の子たちが言っていたみたいに、宇佐美くんと藤崎さんはお付き合いしているんじゃないだろうか。それで、宇佐美くんと話す私を見て、今嫌な思いをしているとか……。


そう考えると、藤崎さんのあの読めない表情にも、納得がいく気がする。

藤崎さんは多分やきもちを妬いていて、それを必死に押し隠そうとしているのかもしれない。


「えっと、宇佐美くん。私他にしなくちゃならないことがあるから、もう行くね」


宇佐美くんがどういう意図をもって私に話しかけてくれたのかは分からないけど……とりあえず今後は、なるべく話さないように、関わらないように気をつけよう。


矢継ぎ早にそれだけ告げた私は、口を開こうとしていた宇佐美くんに背を向けて、その場を後にした。