「っ、……何で?」
宇佐美くんの瞳から、ぽろりと大粒の涙がこぼれ落ちる。
「何でそんなことするわけ? 夏目さんは……俺の隣、嫌なの?」
席替えのくじを引き終えて騒めいていた教室内が、今ではシンと静まり返っている。
そして、そんなクラスメイトたちの視線を一心に集めているのが、クラスの人気者――いや、校内でも指折りのイケメンであり、学年を問わずモテている有名人の彼、宇佐美遥翔くん。
そして、そんな宇佐美くんに何故か腕を掴まれている私――クラスでも地味で大人しい部類に入る、夏目小夜。
いつもクールな宇佐美くんが、一体どうして泣いているのか。
クラスメイトの皆が戸惑っているのがひしひしと伝わってくるけれど、それ以上に、私だって戸惑っていた。
私と宇佐美くんは同学年ではあるけど、そこまで接点があるわけでもなく、つい数日前に二年生に進級して同じクラスになったばかりだ。
けれど――私は宇佐美くんに、嫌われている。
それはまぎれようもない事実だ。