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数か月前の記憶を思い起こしていれば、いつの間にそばにきていたのか、今まさに考えていた宇佐美くん本人が目の前に立っていた。

私が物思いにふけっている間に、つっこちゃんは他の部員たちに飲み物を配りに行ってしまったみたいだ。


「う、さみくん……どうしたの?」


宇佐美くんは黙ったまま、その場に立ち竦んでいる。

かと思えば右掌を広げて、私の前に差し出してくる。


「スポドリ、ちょーだい」

「え? ……あ、スポドリだね。はい、どうぞ」

「……ん。ありがと」


宇佐美くん、今まで私の所にスポドリを受け取りにきてくれたことなんて、一度もなかったのに。

そもそも部活中に、こんな風に普通に声を掛けてくれたことだって、絶対になかったように思うんだけど……。


――やっぱり最近の宇佐美くんは、どこか変だ。


水分補給をしている宇佐美くんを見ながら、調子でも悪いんじゃないのかなって心配に思っていれば、誰かに見られているような視線を感じた。