「つっこちゃん、もうボール磨きは終わったの?」

「ん、バッチリ。そろそろ休憩だし、ウチらは飲み物準備しちゃお」


私やつっこちゃんは料理部に所属しているけど、こうしてバスケ部のお手伝いに行く機会がとても多い。


元々、ウチの中学のバスケ部はとても強かったらしい。強豪ってやつだ。


全国中学校バスケットボール大会(略して、全中って呼ばれてるんだって)っていう中学校の中での日本一を決める大会では、何年か前、準決勝までいったこともあったらしい。

ちょうどその時期にマネージャーの手が足りなかった際、料理部が手伝いをすると声を上げたことがきっかけとなり、それ以来、伝統のような形で引き継がれて、料理部が手伝いに行くようになったのだという。


基本的には差し入れを持っていくことがメインだけど、人手が足りない時なんかにはマネージャーの仕事を手伝うこともあって、今日がそのお手伝いの日だった。


現在バスケ部のマネージャーは三年生と二年生に一人ずつしかいなくて、今日は三年生の先輩が家の所用で部活をお休みしている。

そのため、マネージャーが私たちと同学年の藤崎さんしかいないので、私たち料理部が助っ人にきているというわけだ。


まぁそこまで仕事が多い訳でもないから、飲み物の準備やらを終えたら、後は各自解散か、そのまま練習を見学していくっていうのがいつもの流れなんだけど……。


今までの私は、目立たないように陰でひっそりと仕事をして、自分の業務が終わればすぐに体育館から立ち去っていた。

宇佐美くんに見つかれば、冷たいまなざしを向けられたり、厳しい言葉を掛けられることが目に見えて分かっていたからだ。