「……それ、俺がもらっちゃだめ?」


不安そうでいて、どこか甘えるような、ご主人に餌を求めるわんちゃんみたいな表情(なんて言ったら失礼かもしれないけど)で見下ろされて、私は持っていたクッキーを宇佐美くんに差し出す。


「ううん、もらってくれたら嬉しいな」


両手でクッキーを受け取った宇佐美くんは、ゆるゆると嬉しそうに口許をほころばせる。


「ありがとう……一生大事にするね」

「ふふ、それじゃあ腐っちゃうよ。ちゃんと食べてね」

「……ん、分かった。大事に食べる」


クッキーを手にした宇佐美くんは、幸せそうに笑っている。

その表情を見ているだけで、私までふわふわと浮き立つような、甘酸っぱい気持ちが胸いっぱいに広がっていくような感覚を覚える。


――今度は宇佐美くんのためだけにお菓子を作ろう。そうしたら、もっと喜んでくれるかな。


そんな幸せな未来を想像してみる。

宇佐美くんの手元を見れば、袋の中に入っているにゃー美ちゃんの形をしたクッキーが、優しく微笑みかけてくれているように見えた。