「……一目惚れ、だったんだ。夏目さんは覚えてないと思うけど、入学式の日に、夏目さんがこれからよろしくって声を掛けてくれて……笑顔がすごくかわいいなって思ったんだ。それから夏目さんのこと、無意識に目で追うようになって……」


――知らなかった。正直、入学式の日に宇佐美くんに話しかけたことも、あまり覚えてはいない。たくさん友達ができたらいいなって、入学式の席で近くになった子に声を掛けたことは覚えているけど……そっか、あの男の子が宇佐美くんだったんだ。


「でも、今まで夏美以外の女子とまともに会話したことなんてなかったし、好きな子なんていなかったから、何て話しかけたらいいか分からなくて……だけど夏目さん、いつも凪沙とばっかり仲良くしてるし、俺が近づいても逃げてくし……だから苛々して、悲しくなって……それ全部、ガキみたいに夏目さんにぶつけてた。……本当に、ごめん」


宇佐美くんは辛そうに顔をゆがめて頭を下げる。

顔を上げるように声を掛けようとしたけど、宇佐美くんはその体制のまま、更に言葉を続ける。


「でも、凪沙に言われたんだ。いつまでもそんなことしてたら、取り返しのつかないことになるって。後悔しても遅いんだぞって言われて……夏目さんにこれ以上嫌われたくなくて、だから緊張したけど、同じクラスになれたから、自分から夏目さんに話しかけた。夏目さんにはとっくに嫌われてるって分かってたけど……それでも、少しでもいいから仲良くなりたくて」


宇佐美くんの長いまつ毛が、その目元に幽かな影を落としている。

ゆっくりと顔を上げた宇佐美くんは、ひどく不安そうな顔で私を見つめた。