「夏目さん。今までしつこく話しかけて、ごめん。嫌いなやつに付きまとわれて……夏目さんも迷惑してたよな」


地面に向けていた顔をパッと持ち上げれば――宇佐美くんは、私を見てはいなかった。

うつむいたまま悲しそうに眉を下げていて、その瞳は揺らいでいるように見える。


「っ、そんなこと……そんなことないよ。宇佐美くんが嫌いだなんて、そんなこと思ってない。むしろ、私のことを嫌ってたのは……宇佐美くんの方なんじゃないの?」


胸の内にため込んでいた言葉と一緒に、涙もポロリとこぼれ落ちる。

宇佐美くんを真っ直ぐに見つめるけど、涙で視界が滲んで、今宇佐美くんがどんな表情をしているのか分からない。だけど私は、胸に秘めていた思いを宇佐美くんに伝えるために、言葉にして宇佐美くんに届ける。素直な気持ちが伝わるように、ありったけの思いを込めて。


「確かに、昨年までは宇佐美くんのこと……怖くて苦手だなって思ってたよ。でもね、同じクラスになって、隣の席で話すようになって、宇佐美くんがすごく優しい人だってわかったから。宇佐美くんのこと、もっと知りたいなって……そう思うようになったんだよ。だからね、私……」


そこで堪えきれなくなってうつむけば、宇佐美くんが一歩二歩と、こちらに近づいてくる気配を感じる。