「それにしても今日のクッキー、かなりいい感じに作れたと思わない?」

「うん、そうだね」


リボンを巻いてラッピングしたクッキーを見せ合いっこしながら、つっこちゃんと他愛のない話をするこの時間も、私にしてみたら大切な青春の一部だ。

おしゃべりしながら歩いていれば、あっという間に玄関に辿り着いてしまった。靴を履き替えて、正門に向かうつっこちゃんと玄関前で別れる。


「それじゃあつっこちゃん、また明日ね」


手を振って体育館裏へと足を進めれば、背後から名前を呼ばれる。


「小夜!」

「つっこちゃん、どうしたの?」

「……頑張ってね!」

「うん? 頑張るって何を?」

「……色々―!」


ニッと口角を上げていつもの快活な笑顔を浮かべたつっこちゃんは、ブンブンと大きく手を振りながら帰っていった。


――頑張ってねって、何を頑張るんだろう?


考えながら歩いていれば、体育館裏に到着した。夕陽のオレンジ色に照らされたその場所は静かで、どことなく懐かしさを覚える雰囲気が漂っている。


手元にあるクッキーを見ながら、これは夏美ちゃんにプレゼントしようかなと考えて、周囲を見渡してみれば――そこにはすでに、先客がいた。