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「あ、あの、宇佐美くん。これ、さっきそこで、隣のクラスの女の子に渡してほしいって頼まれたんだけど……」


昼休みもあと十分ほどで終わるという時間にトイレに行っていた私は、教室に戻ってきたタイミングで呼びとめられた。

内容は「宇佐美くんにこの手紙を渡してもらいたい」というもので、私が何か言葉を返す前に、女の子は手紙を押し付けるように私に渡して走っていってしまった。


これが俗に言う、ラブレターというものなのだろうことは直ぐに分かった。

ピンク色の封筒の表面には、かわいらしい丸っこい字で“宇佐美くんへ”と書いてある。


「……俺、好きな子いるから」

「そ、そうなんだ?」


――へぇ、宇佐美くん、好きな子がいるんだ。どんな子なんだろう。

格好よくて人気者の宇佐美くんが好きになる子だし、きっとすごくかわいくて素敵な子なんだろうな。