「あ、苺みたいに真っ赤になった」

「っ、もう! 蓮見くんってば、からかわないでよ」


わざと唇をとがらせれば、蓮見くんは「あははっ」と声を上げて笑う。


「ごめんごめん。でも、ちょっとは元気が出たでしょ?」


――どうやら蓮見くんは、私の元気がないことに気づいていたみたいだ。きっとこの苺みるくも、私のためにわざわざ買ってきてくれたんだろうな。


「……ありがとう。蓮見くんのおかげで、元気が出てきたよ」

「それなら良かった。また元気になったら、バスケ部のお手伝いにきてね。夏目さんがいてくれると、俺たちももっと頑張れるからさ」


蓮見くんはひらりと手を振りながら、某有名スポーツブランドのロゴが入ったスポーツバッグを背負いなおして、部活に向かっていった。

もらったバックジュースにストローをさして飲めば、甘さが口の中いっぱいに広がって、幸せな気持ちになる。


「……よし、頑張ろう」


――次からは、きちんとバスケ部のお手伝いに行こう。いつまでも逃げていたって仕方ないしね。それに、今度は宇佐美くんに、自分から話しかけてみよう。宇佐美くんとこのまま話せなくなっちゃうのは、寂しいから。


そんな決意を胸に、ベンチから立ち上がる。

空を見上げれば、厚い雲のすきまから、柔らかな光が降り注いでいた。