宇佐美くんは小さなため息を漏らしてから、女の子を見下ろしたまま言葉を紡ぐ。

ひどく冷え切った声が、私の鼓膜をも震わせた。


「俺、アンタに興味ないから。そもそもアンタのこと、知らないし」


無表情の宇佐美くんと対面している女の子は、真っ赤な顔を強張らせて、その顔を俯かせた。


「そ、だよね……っ、ごめん……」


とうとう涙声になった女の子は、宇佐美くんに背を向けてその場を立ち去ってしまう。


――私も早く戻らないと、宇佐美くんに見つかってしまう。


それは分かっているのに、足に(おもり)が付いてしまったかのように重たくて、動かない。

その場で立ち尽くしていれば、校舎に戻るため、ゆったりした足取りでこちらに歩いてきた宇佐美くんと、目が合ってしまった。