「夏目さん、ちょっと寄り道してこ」


サラリと自然な動作で左手をさらわれたかと思えば、そのままギュッと手を繋がれる。


「えっ、ぅ、宇佐美くん、手……!」


私の慌てる声が聞こえているはずなのに、宇佐美くんはクスクスと笑っているばかりで、繋がった手を離してくれることはなくて。


「夏目さん。俺、もう間違えないよ。――もう悲しませないし、絶対に、誰にもゆずらないから」


不敵なまなざしが、私をとらえて離さない。

触れ合った指先から、じわじわ熱が広がっていく。


手を繋いだまま近くの売り場を一周して、自販機の前に戻ってきた時には――私の顔は、熟れたリンゴのように真っ赤に染まっていた。