「仲里、ごめん」

 謝って

「俺、もうお前のこと好きじゃない。好きになれない。だから、別れよう」

 言い切って。

 好きになれない、ここに存在がないから。
 寂しいよ、悲しいよ、そんなの。

「さよなら」

 最後に颯馬くんはそう言った。
 優しい声だった。

 ――さよなら、お姉ちゃん。

「ありがとう……」

 フラれるって、こんな気持ちなんだ。
 心がズキズキして、笑った顔を思い出して忘れられそうにない。
 でも、これで最後の章が書ける。

 私は小さく言って、彼に背を向けて歩き出した。
 彼も私を追ってはいけないと分かっていたんだと思う。
 花火も終わって、辺りにはカランカランと私の下駄の音だけが響いていた。