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「なあ、俺たちって付き合ってるのかな?」
「なに? 飽きてきた? フってくれてもいいんだよ?」
「いや、飽きたとかないけど」

 仲里は俺と付き合ってると思ってないから、全然デートをしてくれなかった。
 いつも行くのは地元の図書館だけ。
 それでも、俺は彼女との時間を大切だと思ったし、楽しいとも思っていた。

 ただ、どうしようもなく、一方的に不安になる。

 フってくれてもいい、と嬉しそうに言われて、胸が苦しくなった。
 仲里は初めて話したときから何も変わっていない。
 そう思った。

 このまま俺と付き合っていて、フッたとして、仲里にとってそれは意味があるのか? と考えてしまう。
 これは俺の一方的なエゴで、それで……。

「小説、読ませて」
「いいけど、まだ途中だよ?」

 図書館からの帰り、俺は仲里に書きかけのノートを借りた。
 案外、あっさり貸してくれて、彼女は俺のことを信用してくれているのだと感じた。

「ありがとう」

 嬉しさを隠しきれなくなって、俺が笑い掛けると
 
「今日はもう書かないから、明日には返してね」

 そう言って、彼女は急に駆け出した。

「え? ちょ」

 突然のことで、慌てて走って角を曲がると、そこで仲里は俺を待っていた。
 危うくぶつかるところだ。

「びっくりした?」

 彼女がまたイタズラな顔して笑ってる。
 忘れてた、仲里はすぐこういうことをするんだった。

「驚かせないでくれよ。死ぬかと思った」

 照れながら、耳につけたピアスを手でいじる。

 中学に入学するのと同時に空けたピアス。
 小学生のときは地味なメガネでいじめられてたから、中学に入ってコンタクトにして、髪も茶髪にしてチャラい不良グループに入ったんだ。
 教師には口うるさく注意されるが、もう誰も俺をいじめるやつはいない。
 小学校時代の同級生に合っても俺だと気付かれないくらいだ。
 殴り合いの喧嘩だって、たくさんした。
 もう俺は昔の俺じゃない。

「中川くんに聞いてみたいことがあったんだ」

 隣を歩いていると、仲里がぼそりと言った。