「好きが分からないなら、俺と付き合ってよ」

 二人きりの視聴覚室に、やけにはっきり聞こえる俺の声。

 自分から女子に付き合ってくれなんて言ったのは初めてだった。
 恥ずかしいな、これ。

「うーん、試す価値はあるかも」

 しかも、相手には俺への好意が一切ない。
 付き合うのに悩まれるって、なんだよ。

「じゃあ、俺と仲里は今日から恋人だから」

 手を繋ごうと思って、差し出した右手。

「分かった。よろしくお願いします」

 仲里は自分も右手を出して、握手をした。
 恋人というより友情宣言みたいだった。