「そう、なるの?」

 仲里が、本当に初めて知った、みたいな言い方をする。

「そうなるよ」
「じゃあ、別れて」

 別れて、という言葉にどきりとした。初めて言われた言葉だからだ。

「あー、違う、フってくれないとダメなんだ」

 次いで、しまった失敗した、的な顔をされた。
 告白云々でこんな顔をされたことはいままでに一度だってない。

「俺はまだフル気ないよ」

 見ていて面白いし、ここで別れたらもったいない気がする。
 ちょうど俺は退屈だと思ってたんだ。

「ねえ、どうして? 利用しようとしたから怒ってるの?」

 もう正直に「利用しようとした」と言っていて笑いそうになる。

 どんだけ正直なんだよ。
 マジでいまの告白に恋愛感情なんて一切ないのな。

「違う。それってさ、好き同士になってからフラれないと意味なくないか? と思って。だって、そういう話なんだろ? 告白してフラれるんじゃなくて、好きで一緒にいたのにフラれるっていう話。だったら、好きで一緒にいてフラれる感情を知らないといけないんじゃないの?」

 人の感情って、そんなに単純なものじゃないと思うんだよな。
 仲里はあんまり感情を外に出さないイメージだけど。

「たしかに」

 少し考えたあとで、仲里は静かに頷いた。
 それならさ……。