「中川くん、放課後、視聴覚室に来てほしい」

 後ろの席の仲里と話をするのは、それが初めてだった。

 一人でいることが多かった仲里が誰かと話すのを初めて見た気がする。
 それが自分だなんて、心底驚いた。
 しかも、まったく接点のなかった仲里から

「中川くん、私と付き合ってほしい」

 告白されるなんて。

 ドッキリで陰からこっそり誰かが撮影してるのかと思ったが、正直、仲里にそんなことをする友人はいない。

「いや、俺、ごめ――」

 そこで俺の言葉が止まった理由、それは仲里が期待する瞳をこちらに向けていたからだ。明らかに告白が上手くいくほうじゃなくて、断られるほうに期待する眼差しだった。

 仲里は一体、何を考えているんだ?

「分かった。付き合おう」

 そう俺が言った瞬間の彼女の絶望の顔ときたら、思わず笑いたくなるほどだった。

 本当に何を考えているのか分からない。それが面白かった。

「なんでフってくれないの?」
「え?」

 怨念がこもったような言い方をされて、少し戸惑う。