「うん、よくなった。こう文章に繊細な感じが出てて、やっぱりAちゃん、物書きとしての才能あるんだな。続きが気になる」

 夏休みを目前にしたある日の放課後、お姉ちゃんと私の書きかけの小説を読んだ颯馬くんが図書館の隅で言った。そう言ってもらえて嬉しくなる。でも、それだけじゃない。

「あとはフラれるところだけ」

 言いたくなかったけど、本当にそこまで来たのだ。
 残されたのはクライマックスだけ。

 終わってしまうのだ。
 その意味を考えるだけで怖い。

「帰ろうか」

 颯馬くんは私の考えていることをくみ取ったのか、そう言った。
 今日、このまま一緒にいたら、私がフラれることばかり考えると思ったんだと思う。
 その通りだ。

「明日、デートね」
「分かってる」

 いつもの駅前で別れて、考えてしまう。
 その時は、明日なのだろうか、と。