「次は明日の放課後、Aちゃんの学校の前で」
「私の?」

 悩むことなく告げるお姉ちゃんに私は聞き返した。
 私が通っている中学校はお姉ちゃんが通っていた中学校と違って、電車に乗る必要がある。わざわざ遠くにしなくても、と思うけど。

「そう、ここだと、ほら知り合いが多すぎて話しにくいから。私の存在が他の人にバレたら消えちゃうし」
「消えちゃうの?」

 それは困る。
 私は慌てた。

「うん、だから両親にも会えない。私が話していいって言われてるのはAちゃんと知らない人だけなんだ」

 淡々とお姉ちゃんが言う。
 お姉ちゃんには神様か何かと約束したいろいろな制約があるみたいだ。

「他の人にも見えるんだ?」
「見えるよ、普通に。変な動きしたら注目される」

 そう言って、彼はクネクネと変な動きをした。
 横を歩いていく会社員の人がチラッとそれを変な目で見て去っていく。
 お姉ちゃんは「ね?」と笑った。
 いつもだったら、私もお姉ちゃん何してるの、って笑えてたかも。
 でも、心配なんだ。

「お姉ちゃん、本当に明日も会える?」

 本当に、本当に明日も会える?

「うん、約束する」

 お姉ちゃんは私の目を真っ直ぐに見て、静かに頷いた。

「指切りしていい?」
「いいよ」

 私が尋ねるとそっと差し出される右手。
 小指を絡めると、体温がちゃんとあった。
 温かかった。

「生きてる……」

 せっかく涙が止まったのに、また泣きそうになる。