「颯馬くん。いま、知ってる人と話してたけど、大丈夫なの?」
「え?」

 私が尋ねると颯馬くんは驚いたような顔をしていた。
 八百屋には私たちが小さい頃、よくお母さんと行っていたから、お姉ちゃんもよく知ってるはず。もしかして、忘れちゃった?

「知ってる人と話したら消えてしまうって」

 心配になって聞いてみるけど

「あー、ほら、こっちが忘れてるからじゃないかな」

 颯馬くんは、分からない、みたいに答えた。

 ――ねえ、消えはじめてる?