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「Aちゃん……! こんな時間に帰ってきて、どこ行ってたの……!」

 家に帰ったのは夜の九時過ぎで、うちの門限はギリ七時だから玄関の扉を開けた瞬間にお母さんが怒りと心配半々の表情で立っていた。後ろに立っているお父さんの顔に怒りはなくて、ただ心配している顔をしていた。

「やっぱりまだお姉ちゃんのこと気にして……」

 そう言いながら、お母さんは私のことをぎゅっと抱きしめた。
 私がお姉ちゃんのことで気に病んでると思ってる?
 間違ってないよ。でもね

「違うの。ごめんなさい……、ちょっとやってみたいことがあって……」

 颯馬くんに繋ぎ止められたんだ。

「お願いだから、私たちを心配させないで。あなたまで……」

 お母さん、泣いてる。
 最後まで言葉を言えないのは、どうして?
 私が消えたら、お母さんとお父さんは壊れてしまうだろうか。

「大丈夫、ほんとにごめんなさい」

 私はお母さんの背中を優しく撫でた。
 お姉ちゃんに会ってる、って言えたら、どんなにいいか……。

 その思いを胸に秘めて。