「生意気だねぇ。お兄ちゃんさ、俺たちにお金くれない?」

 他の二人が間宮くんに怖い顔で詰め寄る。
 まだこんなことをする人たちがいるんだ。

「こんなことして恥ずかしくないんですか?」
「うるせぇな! 先輩に説教かましてんなよ!」
「うっ」

 注意した間宮くんの胸ぐらを掴んで、高校生の一人が彼を地面に転がした。

「間宮くん!」

 叫んだけど、間宮くんはなすすべがなくて、立ち上がれそうになかった。

「もうそいつはいいや、放っておこうぜ。君は俺たちと行こうな」

 間宮くんのことは転がしたままで、私の手を掴んで高校生たちはどんどん路地のほうに進んでいく。

「いや! やめてください! 離して!」

 抵抗したけど、元々人通りの少ない場所で、さらに路地に引きずり込まれて、誰も気付いてくれない。

 ――助けて! 颯馬くん!

 頭に浮かんだのは颯馬くんの顔だった。

「ぐはっ!」

 突然、一番後ろを歩いていた高校生が壁にぶつかって倒れた。

 何が、起こったの……?

 そう思って固まったのは、私だけではなかった。
 高校生たちが固まって見つめている先に彼はいた。

「颯馬くん……」

 怒りをあらわにした颯馬くんの姿を見て、心が震える。