「ごめん、嘘、本当は知ってるんだ。仲里さんが他校の人と付き合ってること」

 間宮くんは悲しそうに笑いながら、そう言った。
 あんなに騒がれていたら、もしかしたら間宮くんも知ってると思ってたけど、やっぱり知ってたんだ。

「知ってて、どうして?」

 どうして、付き合ってなんて言ってきたの?

「まだ先だけど、僕の気持ちを隠したまま卒業したくなかったから。言葉にしなきゃ、僕が仲里さんを好きだったことは一生、君に知られることはない。知っていてほしかったんだ」

 路地を前にして、間宮くんが立ち止まる。
 真っ直ぐな子なんだな、と思った。 
 だから、ちゃんと返事をしてあげなきゃいけないんだ。

「ありがとう。でも、ごめんなさい。間宮くんとは付き合えない」

 この「ごめんなさいに」すべての謝罪を込める。
 嘘を吐いてごめんなさい。
 気が合わないなんて思ってごめんなさい。
 利用しようとしてごめんなさい。
 付き合えなくてごめんなさい。

「うん、はっきり言ってくれてありがとう」

 間宮くんは優しく笑った。
 彼はこの先、きっと素敵な恋をする。
 そんな気がした。

「帰ろうか」
「うん」

 二人で頷き合って、歩き出す。

 彼をフッたことによって、心のどこかが一つ欠けてしまった気がした。
 それに胸が落ち着かない。
悪いものじゃなくても、人に感情をぶつけられるってこんな感じになるんだ。

 ちょっとぼーっとしていたかもしれない。

「え?」

 気が付くと、正面から歩いてきた男子高校生に私は腕を掴まれていた。

「君、可愛いね、中学生?」
「ほんとだ、可愛い」
「何年生?」

 三人組で、私を囲う。茶髪で耳にはピアスで明らかに私とはタイプが違う世界の人たちだった。

「やめてください! その子から手を離せ!」

 すぐに間宮くんが私の腕を掴んでいる高校生の手を解こうとしてくれた。でも