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「これから二週間くらい、Aちゃんに会えない」

 作戦を決行しようとした矢先のことだった。
 会議をした次の日の放課後、颯馬くんに会ったらそう言われた。

「二週間後の月曜日、またいつもみたいにAちゃんの学校まで行くから」

 図書館の隅で優しく微笑む颯馬くん。

 一体、その間に何をしてるのか、なんて怖くて聞けない。
 知られてしまったら消えてしまう、とか、また言われるかもしれない。

 小説を完成させてほしい、って頼んできたのはそっちなのに、私のことなんて、やっぱりどうでもいいんだ、と思ってしまう。

 颯馬くんじゃなくたっていいんだ、付き合って、好きになって、フラれる気持ちが分かれば、それで。だから……

「いいよ。私、その間に友達と遊ぶから」

 ちょっと意地悪な言い方をする。
 颯馬くんじゃなくても大丈夫って、そんな気持ちを込めて。
 作戦決行。

「Aちゃんもテスト期間じゃないの?」

 気にするのそっちか、と思う。
 たしかに間違ってないけど。

「テストの最終日に遊ぶの」

 テストが終われば、その日は早く帰れるから、そのまま遊びに行くことになる。

「金曜日か。どこ行くの?」
「内緒」

 実はまだ行き先は決まっていない。
 間宮くんにまずは友達として遊びに行こうとは言ってあるけど。

「気をつけんだぞ?」

 正面に座った颯馬くんが真剣な顔で言う。
 ちょっとは気にしてくれてる?
 それとも、ただ家族として妹の身を案じてるだけ?
 相手が男か女か聞いてこないし。

「分かってるよ」

 ふてくされて見えないように、私は下を向きながら言った。
 今日から二週間、颯馬くんには会わない。